こんにちは。とおやま犬猫病院の院長、遠山伸夫です。
以前のブログ(<期間限定>春の健康診断キャンペーン2016)でフィラリア予防のシーズンインをお知らせしました。
犬ちゃんの飼い主であるあなたもご存知の通り、フィラリア症はなによりも「予防」が肝心です。
毎年、春になると犬ちゃんと一緒に動物病院へ行って、フィラリア予防薬を処方してもらっている方がほとんどでしょう。
そしてその時、フィラリアに感染していないか血液検査していませんか?
獣医さんに薦められるがままに、フィラリア予防とその検査をしてるけど...
「フィラリア予防って絶対必要なの?」
「そもそも、毎年のフィラリア検査は必要なの?」
「昨年はしっかりと予防しているのに、それでもフィラリア検査する意味はあるの?」
こんな疑問を持ったことありませんか?
このような疑問を持たれるのは、
犬ちゃんの飼い主であるあなたにとって、何の不思議もありません。
むしろ、当然です。
フィラリア予防薬にはお金がかかります。
また、フィラリア検査はチクっとする採血をしなきゃいけないし、待ち時間がかかるし、それに検査費用もかかります。
今回は、犬ちゃんの飼い主さんであれば誰もが抱く
そんなフィラリア予防と検査の必要性についてお答えしようと思います。
まずは、フィラリア症のおさらいを。
フィラリアとは糸状虫という寄生虫であり、成虫になると細い糸のような形になります。
この成虫が心臓や肺動脈に寄生すると、お腹に水が溜まる腹水貯留や心不全を起こすようになり、最終的には死に至る非常に危険な病気です。
次に、犬ちゃんへフィラリアが感染する順番をおさらいします。
①すでにフィラリアに感染している犬ちゃんから蚊が吸血します。
②その時、フィラリアの成長段階にあるミクロフィラリアという小虫が、血液と一緒に蚊の体内に入ります。
③蚊の体内で、ミクロフィラリアは犬ちゃんへの感染力を持った感染幼虫へと成長します。
④成長した感染幼虫を持った蚊が、他の犬ちゃん(そう、あなたの犬ちゃん!!)に吸血する時に感染します。
⑤犬ちゃんに伝染した感染幼虫が約2ヵ月で成虫へと成長し始め、数ヵ月後には心臓や肺動脈に寄生します。
つまり、あなたの犬ちゃんへの感染が成立する⑤にならないように毎年春から初冬にかけてフィラリア駆虫薬で予防しているのです。
本題に入りましょう。
まず、フィラリア予防の必要性についてです。
残念ながら、そもそもフィラリア予防をしていない犬ちゃんも見かけます。
今まで予防してなくても大丈夫だった犬ちゃんもいるでしょう。
確かに数十年前と比べると、フィラリア予防の普及によりフィラリア感染している犬ちゃんは劇的に減っています。
また、室内飼いの犬ちゃんが多くなり、フィラリアを伝染する蚊との接触が外飼いの時よりは少なくなったのも事実です。
では、これらがフィラリア予防をしなくていい理由になるのでしょうか?
答えは...、『いいえ』。
なぜならば、犬ちゃんのフィラリア症は少なくなったとはいえ、実際に感染している犬ちゃんはいます。
つまり、その犬ちゃんから蚊を介して、あなたの犬ちゃんに伝染する危険性はゼロではないのです。
今までたまたま感染していないだけで、今シーズンに感染するリスクはもちろんあります。
また室内飼いだからといって、蚊との接触がゼロではないのです。
想像してみてください。
あなたのお家の中で、あなた自身が蚊に刺されたことはありませんか?
外へ通じる扉(玄関や窓など)がある限り、蚊が入ってくる可能性は消えないでしょう。
フィラリアに感染する可能性は高くないかもしれません。
しかし、その可能性はゼロではありません。
そんな保証のない「感染しない可能性」と、あなたの犬ちゃんの「命」を天秤にかけるメリットはあるでしょうか?
これに対する答えは、犬ちゃんを愛しているあなたであれば、もうわかっていますね。
次に、毎年行うフィラリア検査について。
ついうっかり、犬ちゃんにフィラリアのお薬を与え忘れた。
与えたと思っていたら、あなたの知らない間にそのまま吐き出していた。
こんな経験、あなたはありませんか?
現実問題、こんなちょっとしたことで不幸にもフィラリア感染してしまった犬ちゃんが報告されています。
では、しっかりと予防ができておらず、
フィラリアのお薬を与えてしまったらどうなるの?
その疑問の答えが、毎年のフィラリア検査の理由です。
「フィラリアの成虫が心臓や肺動脈にいる状態(上記⑤)」では、
フィラリア駆虫薬をそのまま与えるのは、非常に危険です。
なぜならば、フィラリア駆虫薬は成虫を殺してしまうからです。
「えっ、成虫を殺してしまえるなら、むしろ犬ちゃんにとって好都合でしょう?」
いいえ、違います。
むしろ、この死んだ成虫が犬ちゃんにとって重大な影響を及ぼします。
ここで思い出してください。
フィラリアの成虫はどこに寄生してましたか?
そう、主に心臓や肺動脈。
心臓や肺動脈で死んでしまった成虫は、心臓からの血流にのって肺の血管に詰まってしまうのです。
これが、死滅したフィラリア虫体による肺血栓塞栓症です。
大量のフィラリア虫体によって肺血栓塞栓症になってしまうと、
肺での酸素交換が上手く行えず、
呼吸困難や心血管系ショック、ついには突然死を引き起こします。
毎年、春のフィラリア予防薬を開始する前に、動物病院で血液検査をする理由がここにあります。
お薬の飲み忘れや吐き戻しによって、フィラリア感染が成立していた場合、
フィラリアを予防するためのお薬が、あなたの犬ちゃんの命を脅かす危険性があるのです。
フィラリア検査には手間とコストがかかりますが、
かけがえのない犬ちゃんのために、毎年欠かさず行ってあげてくださいね。
今回は、毎年のフィラリア予防の大切さとフィラリア検査の必要性についてお伝えしました。
ブログの文章だけではわかりづらかった方は、お気軽に当院までご相談ください。
わかりやすい図や画像などを使って、当院獣医師が丁寧に説明させて頂きます。
P.S.
犬ちゃんのフィラリア感染症は、
投薬をしっかりと行うことによって確実に予防できる病気です。
一旦、フィラリア感染が成立してしまうと、その治療には予防よりもコストがかかってしまいます。
もちろん、あなたの犬ちゃんの寿命にも悪影響が出てしまいます。
繰り返しになりますが、フィラリア症はなによりも「予防」が肝心です。